四つ辻にて

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

怪異怪談というのは、草木も眠る丑三つ時だったり、
隣に立つ人の顔が翳る逢魔が時に遭遇するものだと思われがちだ。

が、現実には会う時は真昼間でも会う。

非日常とは、あからさまに怪しい所にばかり出現するわけではなく、
日常にぽっかりと口を開けている・・・・事もある。

名古屋という街

名古屋というのは「都会のフリをした田舎」とよく言われるが、
実際住めばその言葉の意味が分かる。

よく比較される東京大阪に比べると人の出入りがそれほど多くなく、
「じいさんの代から名古屋人」という家も珍しくはない。
そのせいか他の大都市に比べると何処となく閉鎖的で、
市内の中心部に近い所でもわりと一軒家が多い。

以前住んでいた場所も中心部まで自転車で行けてしまう距離にありながら、
マンションアパートよりも一軒家が目立つ場所だった。
(一応、高級住宅街に含まれるらしい)

他県民が「広すぎる!」と驚く大通りに反して、
そのような古くからの家が立ち並ぶ場所は狭く入り組んでいて、
閑静と言えば聞こえはいいが、
人も車もまばらで物騒と言えば物騒な所もある。

犬の吠える四つ辻

私が当時住んでいた所は一本裏に入れば家の一軒、
もしくは二軒おきに道が交差し、
いわゆる‟四つ辻”が結構沢山ある場所だった。

犬が我が家にやってきてから、
散歩でその辻をくまなく歩くようになったのだが、
その中で一つおかしな所があった。

そこを通りがかると、
何もないし、何もいないにも関わらず犬が吠える。

誤解のないように言っておくが、
うちの犬・柴子は野良猫などを見て吠える犬ではない。
そもそもドアの「犬シール」がなければ、
犬が居ることに近隣住人が気付かないほど吠えない犬である。

その犬が、その辻に来るたびに吠える。

まぁ柴子は元々吠えないため、猛烈な吠え方はしないのだが、
何故か「ワン・ワン・ワン」と妙に規則的な変な吠え方をする。

「犬なんて吠えるものだろう」という考えでいけばおかしくはない。
が、犬が吠えるにはそれなりの理由がある。

特に柴子は「無駄吠え」というものが一切ない。
13年一緒にいても、そうゆう事をしているのをまず見た事がない。
近所からも報告として上がった事もない。

確かに吠える事はあるが、月に1度あるかないか。
しかも本人も吠え方を忘れているのか
「ヒャン・ヒャホ」
という上ずった実に情けない声で吠える。

それがこの辻でだけ、妙に犬らしくハッキリ
「ワン・ワン・ワン」
と吠える。
昼夜問わず、そこだけでそうなのだ。

これは飼い主的に結構異様で薄気味悪い。
猫が壁を凝視する以上に薄気味悪い。

別に必ず通らなければならない事情はないので、
いつからか私はその辻を避けて散歩するようになった。

辻の子供

しばらくして、その辻から少し離れた道を通った。
そこは丁度碁盤の目のような所なので、
2つか3つ先にあの辻が見えていた。

その日は辻の真ん中に子供がいた。
何故かその子供は辻の真ん中でピョンピョンと跳ねていた。

別に縄跳びなどをしていたのではない、
ただひたすらにその場で跳ねているのだ。

不意にその子供がこちらを見て私と目があった。

子供は、これ以上にないほど口角を釣り上げて
ニヤリ
笑った。

次の瞬間、私は全速力で犬と共に逃げた。
その時はなぜそうしたのか分からないのだが、
とにかく「マズイ!」と思ったのだ。

当時はあまり気にしていなかったので気付かなかったが、
あの時の私と子供の距離的に裸眼でも
いや、例え眼鏡をかけていても私の視力じゃ
顔の表情までハッキリ見えないはずなのだ。

それが細かく見えた時点で、
相手は十中八九人間ではない。

ちなみに、これは深夜の出来事ではなく、真昼の話だ。

もし、その時逃げなかったらどうなったか?
なんて知るわけがない。

 

それから更に数年後。
深夜にその辺りが火事になった。
出火したのは、その辻にある家の一つだった。

これら一連の出来事に関連があるかどうかは分からない。
ただ、
あの辻には何かあったのかもしれない
というだけの話だ。

 

「四つ辻」は西洋でも東洋でも不思議な話がついて回る場所だ。
呪詛的なものでも「狂わすなら四つ辻」という言葉が出てくるしね。
2本の交差というのは、様々な対極の象徴に見えなくもない。

辻の中央から見れば四方に道がある。
4という数字もまた西洋東洋問わず色んな意味を付与される。
方位、死、4大元素etc.

四つ辻、交差点はこの世に無数にある。
その無数にある辻の一つが、たまに何処かへ繋がっていても
そうおかしな話ではないかもしれない。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。