平成に出会った‟エル”という犬

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「犬」という文字を見て
想像する犬の形は人それぞれだ。

ちなみに私は「犬」と言ったら
シェパードと柴犬がまず頭に浮かぶ。

世の中に沢山いる犬を犬種で分けて、
どれが好きなのか?となった時、
一番好きなのがその2犬種なんだ。

前回に引き続き、今回もそんなシェパードの話。

犬奇譚

犬の感動秘話とか、
犬にまつわるエピソード
というのは世の中にはごまんとある。

まぁそれだけ犬と人の関わりというのは
長く深いのだから当然だ。

そして、やはり
犬にまつわる怪異譚や不思議な話もごまんとある。

だが、その多くは
「亡くなった飼い犬が」
とかそんな話が主だ。

自分が生まれる時に、
なにがしかの障りと思われるものから
犬が守ってくれたかもしれない

というエピソードを持つ人間とは、
いまだに会った事がない。

「犬っこがオメェの代わりになってくれたんだべぇ」

と、私に直接犬の話を聞かせてくれたのは、
父方の祖母さんだが、
何故か母方祖母さんまで
同じ事を言っていたのを聞いた事がある。

故に、私は一族中から
「生まれる前からおかしなことがついて回る子供」
というビミョーな称号をもらっている。

しかし、私の話はこうして広まっているのに、
母が自分と同じくらいのサイズの犬を担いで車に乗せて、
動物病院まで運んでた

って話が広まってないのは不平等な気がするな。

※シェパードは一般的にオスは体重30~40kgとされている。
エルはメスだが、話からすると並みのオスより大きかったかもしれないので、
体重もさる事ながら、立ち上がれば
150cm以下の母より大きかったと
推測する。
・・・そのせいか、早産で保育器にぶっこまれたよ、私(;・∀・)

世にも美しきシェパード兄妹

1匹目のエルがこの世から去って四半世紀後。
私がまだチョビ髭の八幡さんの裏に住んでいた頃だ。

当時、その界隈には美しいシェパードがいた。

オスメス2匹で、
これは後に飼い主から聞いて判明したのだが、
夫婦ではなく兄妹(姉弟)らしい。

2匹揃って飼い主と共に歩く姿は
大きさも相まって
‟犬の散歩”というよりも、

‟二頭建ての馬車を御している”

ように見える。

美しい。
実に美しい。

その界隈にはゴールデンなど
他の大型犬もいたし、
中型、小型でも多頭飼いをして
一緒に散歩をさせている人もいたのだが
その中で群を抜いて美しいのが
この2匹のシェパードだった。

謎のシェパード好き

いつの頃からか、
私はシェパードが好きだった。

いや柴犬も好きだが、
柴犬に愛着を持つ理由は自分で分かっている。

ついでにいえば、その理由のお蔭で
私が柴といって思い浮かべるのは
赤柴ではなく黒柴だ。

が、柴ほど一般的ではないシェパードを
何故好きになったのか自分でも理由が分からない。

祖母さんから聞いた話の影響なのかとも思ったが、
祖母さんの話はいつも
「でっけ犬っこ(大きい犬)」
だったからなぁ。
そもそも、祖母さんは「シェパード」って発音できないし。
(CDを‟シーデ”と発音する世代と方言具合)

ただ、話を聞いて、
何となく想像したのはシェパードのような
立ち耳で精悍だが、
可愛らしい目をした大型犬だった。

彼の名犬が、シェパードであり、
名前はエルだと知ったのは、
もっとずっと大きくなってからだ。

これもまた‟不思議な偶然の一致”だと思う。

犬の縁と平成の‟エル”

そんな訳で、シェパード好きの私は、
この2匹を見かける度に
モフりたい衝動に駆られたが
・・・流石に私もいい年の大人である。

いきなり呼び止めて
「モフらせてください!!」
とは言えない。

そもそも
‟歩く姿に見惚れている間に通り過ぎてしまう”
ので、声を掛けられないのだ。

 

そうして数年間、
指を加えて2匹が優雅に歩く姿を眺めていた。

しかし、縁と言うのは不思議なモノで
その後・・・ひょんな事から、我が家に柴子がやってきた。

柴子物語については別の機会に語るが、
柴子は私に多くのものを与えてくれている。

その大半を占めるのが‟犬の縁”

犬を連れて歩くと、自然と「犬友」が出来る。
やがて、その憧れのシェパード達とも犬友になった。

さて、このシェパード兄妹なんだが
オスのほうは“ベス”
そしてメスのほうは“エル”という。

初めて飼い主から犬の名前を聞いた時、
思わず目が点になったのは言うまでもない。

確かに、よくある名前ではあるが、
オスメスで飼っていたら普通は逆に名前を付けそうなものである。

通常、犬はオスのほうが体格が大きいのだが、
エルもベスも同じくらいの大きさ・・・
つまり
エルがメスにしては大きめ
だったんだ。

先に述べたように、
シェパードは好きだが、
それまで実際にシェパードと遊んだことはなく、
初めて心行くまで触り倒したのがこの2匹だった。

実際に一緒に過ごした彼らは、
私が思った通りの犬だった。

つまり、単純に訓練されているだけではなく
地頭が非常に良く、
自分たちの力強さを理解して
命令されずとも力加減の出来る優しい犬
だった。

彼らは、まだ一歳前で、
我が家に来るまで、ずっとペットショップの
狭いケージの中にいた柴子と上手に遊んでくれ、
私ともよく遊んでくれた。

で、犬との遊びといえば‟ボール遊び”なかが定番なんだが、
柴子は今も昔も‟何かを咥えて運ぶ”が下手くそだ。

取りに行くし、咥えて戻っては来るが
途中でボールを落として、
それに気付かず自分だけ戻ってくる(笑)

もうこれは「口不器用※」として諦めた。

※まぁボールにもあまり執着を覚えない犬だし。
ちなみに他のおもちゃも1mくらい歩くと落とす。

で、咥えてた事を忘れる。

その点、彼らはボール遊びが好きだし、非情に上手かった。

投げたボールを少しジャンプしてキャッチし、
咥えて持ってくる姿は体格もあってダイナミック。

しかし粗野でなく、
ボールの軌道を読み無駄のない洗練された動きは
映画やテレビに登場するK-9そのものだ。

そうしてボールを運んできて手渡しては
「もう一度投げて」
と、あの茶色で透明な、
顔の大きさの割に小さな目でねだる。

これぞ、まさに‟ギャップ萌え”

 

もしも実家のエルが生き延びていたら、
小さな私とこのように遊ぶ機会があったかもしれない。

なんて、いつも思いながら私はボールを投げていた。

親父とエル

さて、前回の話のエルの飼い主というのは死んだ親父である。
ただ、犬に対する考えは私と親父ではまるで違う。

私にしてみたら犬は同志のようなもんだが、
親父にとって犬は何処までも犬で家畜だった。

だから、こちらから聞かないと
親父の口から歴代の犬の話を聞くことはなかった。

そんな親父が特に聞くわけでもないのに
自ら口にしていた犬の思い出話に登場するのがエルだった。

「うちには昔凄く大きなシェパードがいて、
子供の頃から大きかったから名前をエルにした。
子犬の頃から賢かったから訓練校にも入れて教育してた。
猟でもよく働いてくれた」

私が覚えている限りでは、
うちにはエルを含めると合計4匹の犬がいたのだが、
この様に‟思い出話”として親父の口に名前が上る犬は
エル1匹だけだった。

 

うちは諸事情がありとにかく犬が長生きしない。

まぁ上手くやればその災難は逃れられたのだが、
その事実が判明したのは親父の死ぬ一か月前である。
(詳細は「神さんのかあさんのご神託」をどうぞ)

そんな中で多分エルは長生きしたほうで、
だからオヤジ的にも特別思い入れがあったのだろう。

不可解な話については無縁で否定的な親父だが
エルが私の身代わりになった話だけは、
存外信じていたのかもしれない。

 

ある時親父を連れて、皆の集まる広場へ遊びに行った。

やがて、例の2匹がやってきて、
遊んで欲しい柴子は2匹の所へ一目散。

親「あ!! いいのか? 噛まれたらひとたまりもないぞ」
私「いいんだよ、あの子らは賢いし、優しいから。
まぁ黙って見とればいいわ」

まだピチピチの柴子と比べると、二匹は老犬に近い。
マトモに追いかけっこをした所で勝てないのをよく知っている。

走り出した柴子を打ち合わせをしたように
2匹が左右から追いかけて挟み撃ちにする。
そして捕まったら
“ヨダレでベロベロの刑”(笑)

二匹に代わる代わる舐められて、
ベロベロになりながら喜んでいる柴子を
親父は呆気に取られて見ていた。

私は思わずニヤニヤしながら
私「あれな、オスのほうはベスというんだけど、
メスのほうはエルという名前なんだよ

親父も思わずポカンとする。

私「二匹ともボール遊びがとても好きなんだよ。
あんた、一緒に遊んで来たら?」

親父はいつも通り
「うちにも同じ名前のシェパードがいたんだぞ」
といって、飼い主に挨拶をした後、
しばらくボール遊びに興じていた。

3匹目のエルを待つ

この時から更に数年たった。

私がそこを越す前に、ベスのほうが病気のため
足を切断しなければならず、
結局その後亡くなったと聞いた。

エルについても大型犬の寿命を考えると、
もうこの世にはいないだろう。
あの時ボール遊びに興じていた親父も既に他界して久しい。

 

道でシェパードを見かける度に
私は親父がシェパード達と遊んでいた姿を思い出す。

結局の所、あの世の仕組みなどは皆目検討もつかないのだが、
アチラで親父は本物のエルに会えただろうか?と思う時がある。
二匹のエルには、なにがしかの繋がりがあったんだろうか?とも思う。
勿論、ただの偶然の成せる技だとも思う。

真偽のほどは分からないが、
ともかく私の人生には、
2匹エルという名のメスのシェパードが登場する。
それだけは紛れもない事実だ。

 

縁というのは、何とも難解な繋がり方をしている。

中々切れない太くて分かりやすい縁もある。
切れたと思っていたのに、
蜘蛛の糸のように細く長く繋がっている縁もある。

今の家の近所でシェパードは見かけないが
多分、また何処か忘れた頃にエルという名のシェパードに
会えるような気がしてならない。

二度あることは三度ある。

その三度目に期待して、新年号を生きるのも
楽しそうである。

 

余談「K-9 友情に輝く星」という映画

動物映画は好きだが、中でもとりわけ好きなのが
この映画。

ハッキリ言って、
私は101分の間、犬しか見てない!!(爆)
(映画も普通に面白いけれどね)

いつか田舎に越したら、
シェパードとも暮らしてみたく、
それが叶ったら、当然名前は「エル」になる。

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