視えない重み ~怪異を運ぶ~

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連日、テレビのニュースで水遊びの際の事故が報道されている。

非常に痛ましい事ではあるが、
これだけ暑ければどうしたって
人は水場に集いたがる。

しかし、水ね。
これは、直接水がどうこうではないが
不幸な水の事故を聞くと
私はあの夏のちょっと不思議な事を思い出してしまうんだ。

四半世紀前の夏

今から四半世紀以上前。
私が中学の頃の話だ。

当時はまだ子供が多く、
特に我が母校は一学年あたり300人強。
全校で1000人のいわゆる‟マンモス校”というやつだ。

で、その夏、
私とは違うクラスの生徒が
川で亡くなった。

確か隣の隣くらいクラスの生徒で、
当時、他人に殆ど興味がなかった私が
何故本人を知っていたかというと
彼が双子の片割れだったからだ。

1000人近くいても双子、特に一卵性の双子は珍しいからな。
流石の私も顔と名前くらいは知っていたわけ。

確か夏休み中の事故で、
休み中に懐かしの‟電話連絡網”ってやつで
学校側から注意喚起の連絡が回ってきたんだが、
如何せん、顔と苗字を知っている程度の相手だから
「ふ~ん、可哀想にな」
と思ったぐらいだ。

そして、その不幸な事故があった長い休みが明けた日の始業式。

うちの学校は、長い集会などがある場合
自分のクラスから個人の椅子を持って体育館へ行くスタイル
を取っていた。

その日も自分の教室から椅子を抱えて、
クラス単位で体育館まで移動するために
列を作って歩いていた。

隣の教室の前を通り、更に隣の教室に差し掛かった時。

ズシッ!

唐突に、椅子に加わるズッシリとした重み。

うっ、うぉぉぉぉ!?

驚いて椅子を取り落としそうになったが、
そこは何とか踏ん張った。

椅子は小中学校でよく見かけるタイプのあの椅子で
いくら当時の私がチビで非力でも
一つ二つなら軽々と持ち上げられた。

大体、普段このように椅子を持って遥か彼方の体育館まで
苦も無く移動していたんだ。

あぁそれなのに、今は指どころか
腕が抜けそうなほど椅子が重い!!

な、なんじゃこりゃぁぁぁぁ~!!

幾ら目を凝らしてみても、椅子の上には何も見えない。
何も見えないにも拘らず、理不尽なほどのこの重み。

しかも、椅子が満遍なく重くなっているんじゃない。
人が腰を下ろす‟座面”が重くなっているのだ。

・・・間違いなく‟見えないナニカ”が乗っている。

正直、10秒も抱えたら限界の重みであったが、
今は列を作って移動中。
足を止めて椅子を下ろすことも出来ない。

・・・・・・・・運んだよ、運んだともさ、
そのクソ重い椅子を。

重さで顔が真っ赤になろうとも、
暑さで汗だくになろうとも、
下ろすことなく運んでやったさ!!

周囲はそんな私を見て
「またコイツなんかおかしい」
と思っていただろう。

いやいいよ、その頃にはもう立派な
変人だったからな、私は。

変人どころか自分で自分の頭のおかしさは自覚していたし、
奇妙な事に慣れるを通り越し、
ほぼ‟やさぐれ”の領域に足を踏み入れ
ポーカーフェイスが板についてしまっていた。

だから、誰に理由を聞かれる事もなく、
勿論誰にも話さなかったけれど。

大体、聞かれたって言えるわけがないだろう。

「誰かが座っているみたいに椅子がクソ重い」

なんて。

内心、ヒーヒー言いながら、
やっと遥か遠くの体育館までたどり着き、
入口を潜った時だろうか。
そのずっしりと重かった椅子が急に元の軽さを取り戻した。

私の椅子に乗っていたナニカは、
まるで体育館に着いた事で満足したかのように
忽然と椅子の上から消えたのである。

一体・・・これはなんだったんだろう?

困惑しながらも
‟カラになった”と思われる椅子に着席し
そのまま終業式に参加する。

式では、当然の如く夏休み中の事故の話が上がり
そこのクラスの列からは
若干のすすり泣きが聞こえた。

そこで、はたっと気付いた。

椅子が重くなったのは、
亡くなった生徒のいたクラスの前だった事に。

私の椅子に乗っていたのは、
その亡くなった生徒だったのだろうか?
死しても尚、
皆と一緒に始業式に出たかったのだろうか?

仮にそうだとしたら、
体育館について軽くなったのは
目的地に着いたからだったんだと
蒸し暑い体育館で妙に一人で納得したのだ。

四半世紀後の推測

この話は、前のブログからの転記なのだが、
以前この話を読んでいたダンナが
コメントしてくれたことがある。

この話をパソコンで読んでいたダンナが、
急にゲラゲラと笑いだしたと思ったら

ダ「嫌がらせだ」

と言い放った。

ダ「だから、これ、運んで欲しかったんじゃなくて
嫌がらせで座ったんだよ」
私「はぁぁぁぁ?」

いや、私、その子と殆ど面識なかったんだけれど、
何故、嫌がらせ?

ダ「怪異に何故は愚問(`・ω・´)ノ
強いて理由をつけるなら、
怪異は認知してくれる人の所へやってくる。
で、これ、間違いなく嫌がらせだから。
特に理由のない嫌がらせ・・・まぁ悪戯だから」

理不尽っっ!!Σ(・□・;)

まぁ椅子に乗っていたのが死んだ生徒だったかはさておき、
とにかく休みの間中、誰もいない学校で
‟暇を持て余した怪異の遊び”
的な話なのだ。

小、中、高、
特に中、高は
珍しく「学校の七不思議」なんてものはない
学校だったんだが、
在学中、チョイチョイとこうゆうエピソードがあった。

人にはとるに足らない扱いをされているが、
どうも怪異と動物にとって
私は‟からかいがい”のある人間らしい。

何しろ昔から負けず嫌いな所があり、
意地になってしまうからな。

ところで・・・・結局、中学生だった私は
今思い出してもクソ重い椅子を
体育館まで一度も降ろさずに運びきったのだが、

もし途中で降ろしてしまっていたら
どうなっていたんだろうね?

真相は当然、遥か彼方である。

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