納棺師さんの優しく粋な計らい

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3月11日は東日本大震災の起きた日だ。

私自身は被災していないので、
何を言っても所詮は他人事に過ぎないため、
何かいうつもりも、
権利もない。

が、それに絡むことで個人的に

なんて凄い人なんだ!

と思う人と出会った事がある。

うちのご指名納棺師

うちの‟とんでも親父”が亡くなった時、
色々不思議な事もあったのだが
とりあえず葬式は普通に出している。

強いて変わっていると言えば、
うちの地域は葬儀の前に火葬する
いわゆる「骨葬」なんだが、
これは大体の家がそうなので、
地元ではむしろこれが普通。

※こうゆう話をすると
「これだから田舎は」って言う名古屋人、
今でもいます。

火葬と葬儀の順番が変わっても
‟関わる人”というのは大差がない。

そしてその中には、当然「納棺師」が入ってくる。

映画「おくりびと」で世間に多く知られる事になった
職業だが、大体は葬儀会社の人のようだ。
(ひょっとしたらフリーの納棺師もいるかもしれんが、
私はそんな人は知らない)

通常は葬儀を頼むと
‟葬儀会社の納棺師の誰か”
が自動的にやってくるらしいのだが・・・・

親父の葬儀の際、
なんと、うちの女ども
納棺師を指名した。

※この女どもは母含む母方の叔母たち。
親父の葬儀だけれど、父方の人間はアテにならんので。

なんでも、その人は
親父より1年早く亡くなった母方祖母の納棺をした人で、
その手腕とキャラを叔母たちがいたく気に入り

「親父もあの納棺師さんに
棺に入れてもらおう!!」

と指名したらしい。

で、その人も本来ならその日は休日だったのを
休みを返上して、わざわざ来てくれたそうな。

まぁそうしてくれた理由っていうのが、
祖母の納棺の後、持病の高血圧が元で
倒れてしまった時、

その場にいた叔母2人(猛者クラス看護婦×2)に
即・適切な対処をしてもらえ
大事に至らなかった

からだそうだ。

「いやいや、まさか仕事中に倒れるなんてね。
うっかりしたら、私が仏になる所でしたが、
看護婦さんが2人もいらっしゃるなんてね。

助けられたご恩返しじゃありませんが、
ご指名頂いたので
やってきました。

ご指名頂いたのもこちらが初めてですし、
えぇ、初指名なんです」

・・・・・明るい。語り口が妙に明るい。
しかし、なんか面白いぞ、この人。

え?あれ?
納棺師って面白いものだったかな?

明るく見送る

葬式はともかく納棺なんざ滅多に
見る機会はないものだから、
他の納棺師さんがどうかは知らない。

しかし、祖母も大往生であったし、
親父の享年61歳を
「早すぎる」
と嘆いていたのは他人だけ。

うちの家族は意外と
「死んだもんはしゃーないやろう」
という具合で、
妙にサッパリというか
・・・・ぶっちゃけ明るかった。

ここだけの話、家族にとってアレは納棺や火葬、
葬儀ではなく、
「親父のお疲れ様会」
みたいなもんだった気がする。

だから、妙にしんみりやられるよりも、
軽妙な語り口の
この納棺師さんを指名したんだと思う。

 

そう、この納棺師さんは
トークが絶妙に上手かった!!

手順や、やっている事の
説明をしてくれるんだけれど、
それが辛気臭くなく、
かといって不謹慎すぎない。

間の取り方とか声のトーンとかが
絶妙!!

・・・正直、ほぼ寝ないで準備して名古屋から飛んできた
私は、もし黙々とやられていたら、
途中で寝てしまいそうだったんだ。

そうじゃなくとも、
親父に取りすがって泣くわけでもなく
あらぬ方向(笑)を見て
「ウバァァァァ~(;´Д`)」
という顔をしていた私を
「親不孝者」と
ののしる身内もいたからな。

(だって、親父がそこに捨てられた子犬のような
で立っているのを見てしまったんだもの。
そりゃ「ウバァァァァ~」ってなりますわ)

うっかり寝ていたら、後から何を言われていたか(;・∀・)

オマケに
いくら納棺とはいえ、
時々「クスッ」と笑いが漏れるような
トークが繰り広げられているので、

横をウロウロしている親父の姿に
笑いそうになっていた私は
遠慮なく笑えた。

まぁ多分、この人だってどこでも同じ調子では
ないんだろうけれど、

「どうあがいても送り出さねばなりません。
だったらせめて、少しでも明るく送り出すほうが
故人様も安心できますから」

と言っていたので、
これはこの人の優しさでポリシーなんだろう。

納棺師のお願い

さて、納棺の際は仏に「頭陀袋(ずたぶくろ)」
というものを持たせる。

首から下げるちっさい袋なんだが、
中に米や六文銭(印刷)、
地域によっては近親者の爪とか入れる。

つまり、死者があの世に旅立つ時の装備品の一つで
言うなれば
‟旅の必需品セット”
ってやつだ。

ここで納棺師さんが

「実は私からお願いがありまして、
一揃え余分に袋に入れさせて頂きたいんです」

とおっしゃる。
一揃え余分、という事は
都合、二人前の旅立ちセットじゃないか。

その理由について、
納棺師さんが驚きの理由を説明してくれた。

頭陀袋二人前の理由

1つでいいはずの旅立ちセットを2つ入れる理由、
それは納棺師さんならではのものだった。

「東日本大震災から数年経ちましたが、
亡くなられた方の中には、

今でもご遺体も見つかっていない方が
沢山いらっしゃいます。

こちらのご主人があの世へ向かう途中、
その迷っている方に会ったら
これを持って一緒に行って頂けるように
入れさせて頂きたいんです」

納棺師さんは、震災の後
自分にできることはないだろうか?
と考えて、思いつき、

以来、ずっとこれを続けているそうだ

別に会社に言われたわけではなく、
何処までも自主的に。

そして、もちろん余分に入れる
中身は全部自腹で自分で用意している。

「いつまでやろうかと思うんですが、
もうしばらくは続けたいんです。
私がやりたいんです。
これが納棺師の私が続けられる唯一の供養です」

先の話の通り、既に震災から数年経過し、
震災直後は、やれ募金だの、
ボランティアで行ってきただの騒いでいた人らも
もうすっかり忘れた頃だったのに

この人はずっとこれを続けていたんだ。

続けていた人の言葉の重み

別にボランティアに行った人や
募金を募る人の全てがそうだとは言わないし、
もちろん、ちゃんとした人もいる。

ただ中には当然、売名的であったり、
‟無謀にも被災地に赴き人助けしちゃう私”
に酔ってる人もいる。

んで、そうゆう人達のいう事は
表向き立派なんだ。
「助け合いましょう」とか
「団結しましょう」とか

でも、全然心に響かなかった。

ただの美辞麗句なのだ。

それに比べたら、この納棺師さんの言葉は
ずっしりと重かった。

それは、皆が忘れてしまった後も
ずっと地道にせめて魂だけは救われるように
魂だけは家族の元へ戻れるように
そうゆう納棺師さんの祈りの重さだと思う。

 

葬儀から何年か経ち、
まぁそもそも親の葬儀や納棺の話なんて
人とする機会は早々ないから、
私もすっかりこの事を忘れていたんだけれど、
今年の3.11のニュースを見ていて
ふと思い出した。

うちはこれから、父方祖母、母方祖父と
順々に亡くなり、
結局母方祖母から4年連続で喪中という
逆オリンピックみたいな事になってたんだが、
どうやら毎回この納棺師さんを指名していたっぽい。

ぽいというのは、私は葬儀に参加していないので
結局、あの納棺師さんに会えたのは
親父の時だけである。

(祖母は家族だけだから、まぁいいって言われたし、
祖父の時は初代が末期の腎不全だったからね)

生きている人間であれば、
まずは生きている人を救えという考えもあるだろうが、
やっぱり人には領分というか、
その人それぞれに出来ることがあり、
納棺も含めて葬儀というのは、
実際には死者ではなく生者のためのものだと思う。

私は、この納棺師さんの頭陀袋の話を聞いた時、
多分、それは巡り巡って
残された人を救う事になるんじゃないのかなぁって
思ったりした。

 

・・・・というかね、大丈夫だよ、納棺師さん。

うちの親父はね、‟えぇかっこしい”だし、
先に死んだ釣り仲間が
三途の川に釣り船浮かべて待ってる
と思うから、

多分、あなたが持たせた二人前の頭陀袋の中身を
全部人に渡して、
自分はその釣り船で釣りしながら渡るだろうからさ。

あ、これ、納棺師さん本人にも言うたげたんだけれど、
メッチャウケてた(笑)

や、でも、やりそうなんだよ。
しかも船上で宴会始めちゃって、
中々向こう岸に辿り着かなくて、
しびれを切らした獄卒に
強制連行されそうなんだよ!!

ま、まぁまぁ、そうゆう親なのよ、うちの親。

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