深夜、ドアの外に ~ヒトコワ・レポート~

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世に出回る怖い話の中には
‟ヒトコワ”
というジャンルがある。

その名の通り
‟人にまつわる怖い話”

実は、
心霊よりもヒトコワのほうが多い
のが私の人生だ。

不思議な依頼人

今から10年以上前、個展をやった直後に
私の元へ一通のメールが届いた。

内容は「個展で絵を見ました」から始まり、
自宅の猫を描いて欲しいという
ごく普通の内容だった。

特筆すべき事があるとしたら、
その送信者が
同じアパートの同じフロアに住む人
という部分。

別にこれは不思議ではない。
何故なら大家に許可をもらって
建物の掲示板に個展の告知を
デカデカと貼っていたのだから。

しかも、ここのポスターにだけは
「〇号室の柴猫ですよ」って書いてあったから
別に私の部屋を知っているのは不思議じゃないんだがな。

 

その頃住んでいたアパートも
今同様、動物が好きな人が多く
動物絡みで結構近所づきあいしていた。

で、その絡みもあり
近隣住人にも
ペット肖像描いてたわけ。

とはいえ、全住人を把握しているわけはない。
件の住人・・・仮にWさんとしておくが、
この時点では、どうゆう人か皆目見当がつかない。

しかし、同じアパート、
更に同じフロアなわけだから
わざわざメールをしなくとも
直接、尋ねたほうが早いだろうに。

そう思ってはいたのだが、
別にそれについて言及するつもりはなかった。

Wという人物に心当たりがないという事は、
恐らく私と生活時間帯の違う人。

わざわざメールをするという事は、
普段茶飲み話をする住人と違い
若い人なんだろうと思ったわけだ。

 

普段、打ち合わせは何処かの喫茶店でするのだが、
相手は同じフロアの人である。

というわけで、
普段一緒に茶を飲むご近所さん感覚で
うちに招く事にしたんだけどな。

・・・・勿論、これが間違いの元だった。

インターフォンを押せない訪問者

約束の日、約束の時間。
通常、客は玄関のインターフォンを押すものだが
それが鳴る様子もない。

ん?すっぽかされたか?

と思っていたら、再びメールが届いた。

【実は私、凄く内向的でインターフォンが押せません。
扉を開けてくれませんか?】

的な事が書いてあった。

・・・なんかそうゆう怪談あったよな?
妖怪譚だっけ?
とにかく
“招き入れてもらわないと入れない”
的な。

一抹の不安を覚えながらも扉を開けたわけ。
そしたら立ってたわけ。
その近隣住人が。

ごくごく普通の
こう言っては何だけれど、
地味な主婦風。

絶対に若くないはずなんだが、
丸々とした体型の上に据えられた
更にパンパンに丸い顔には
まるっきり化粧っけがなく、
それらのせいで年齢が全く推測できない。

そう言えば、確かに数回見かけた事がある。
あぁ、挨拶したらそそくさと逃げてった人だ。
こう言っちゃなんだが、
それなりの年なのにそこまでコミュ障なの?

とりあえず上がってもらって
話をし始めたんだが、
話をすると別に
「恥ずかしすぎて口も聞けません」
っていう風ではない。
それなりに喋る。

・・・インターフォンが押せないのは
一体何だったんだろう?

と思いつつ、話を聞いていたんだが、

なんか、何かな~。
話が引っかかる。

色々話をしてくれるのはいいんだが、
話す内容がほぼ日常や今までの出来事の不満で、
2~3分に一回
「ムカついちゃって」
というワードが出てくる。

猫の絡んだ話もあるが、
その時の周囲の対応等々についての
感想がほぼ9割
「ムカついちゃって」
なんだよ。

今まで色んな犬猫好きという人と話したけれど、
普通は大体ゲラゲラ笑いながら
凄い穏やかに話が進むんだけど、
この人ちっともそんな感じじゃない。

それと、終始目が合わない。

うつむいたままひたすら愚痴と
「ムカついちゃって」
を繰り返す。

んで、その様子が単純に内向的で
人の目を見るのが苦手・・・
という人ともなんか違うんだ。

ちなみに肝心の猫の絵の依頼だが、
持ってきた写真は全部ピンポケ。

「今、お渡しできる写真がなくて」
って事で、
写真が撮れたら持ってきて頼みます
という話になった。

・・・本当に、一体何しに来たん?この人??

頼む内容が違うだろうっっ!!事件諸々

で、結局何だかんだで半年近くこの人と付き合う事になるのだが、
結論から言う。

結局仕事は頼んでくれなかったぁぁぁ~!!

が、代わりにどうでもいい事は
散々頼まれた。

ある時は
「家の猫が脱走して、向いの空き家に入ったから探してください
(私は内気で入れないから、お前が塀を乗り越えろ)」

・・・結局、猫は脱走してなくて家にいた。

ある時は
「猫が脱走して、階下の部屋に入り込み暴れたので、
謝罪のための菓子折りを買ってきてください
(だって私内気だから買物になんていけない)」

・・・・丁重にお断りしました。

ってか、自分で買いに行って自分で渡しに行かないと
謝罪の意味ねぇだろう?

更にある時は
「近所のコンビニにいる猫が可愛くて
餌をあげたら着いて来られた。
私、そうゆうのほっとけない質なので
代わりに保護してください
(だって、うちにはもう猫いるんだもん)」

仏の顔とて3度まで。
ましては私は“いい人”とは縁遠い、
むしろ‟いい人なんて糞くらえ”
の人間だ。

この時ばかりは、キレた。
えぇ、存分にキレもうしたわ。

「責任も取れないのに勝手に餌やって
その尻ぬぐい他人にさせようとしてんじゃねぇよ!!
‟ほっとけない質”だと?自分が慈悲深い人間様だとでも
思ってんのか!!
ふざけんなぁぁぁ!!」

(↑別にここまでキツくは言ってないけれど、
心情をそのまま申し上げると
このようになります)

インターフォンを押せないほど内気な人が
こんな事を1度話をしただけの人に頼めるのだろうか?

そりゃ、それだけ逼迫していたのかもしれないが、
私は困っても友達でも何でもない、
ただ1度一緒にお茶を飲んだだけの相手に頼むほど
図々しい事はできない。

しかも、独り暮らしで他に頼る人もないなら分かるが、
この人、ダンナさんいるんだよね。

・・・・え?何故ダンナに相談しない??
いや、そりゃ、ダンナの事も
「ムカついちゃって」
って言ってたけど。

 

ちなみにこれらの事は突然電話が掛かってきて
言われるのだが、
日頃からどうでもいい内容のメールが阿保ほど来ていた。

この猫の件でブチ切れた後も
何度もしつこくメールや
電話が掛かってきたのだが、
それらを全部無視したら
ある日、憔悴しきった大家が訪ねてきた。

※大家も同じ建物内に住んでいる。

大家いわく
「〇号のWさんに
‟柴猫さんを怒らせてしまった、どうしよう”
って相談されたんだけどさ。
ちょっとさ、メールだけでも返してあげてくれない?
そうしないと、毎日来るのよ、あの子

どうやら、私にガン無視された彼女は、
矛先を大家に変えたらしい。

これまでの話を大分湾曲させて大家に伝え、
私との間を取りなしてくれるように
毎日、大家宅に凸ったそうだ。

大家が励ますか何かを言えば黙り込み、
そのまま玄関先に立っているので
ほとほと困り果てたらしいんだよ。

しかし、何で大家にそんな話をしているんだ?

大家「いやぁ、引っ越してきた時に
‟困った事があったら相談においでね”
って言ったのよ。
言っちゃったのよ・・・

まさか、あぁゆう子だとは思わなくて」

そんな大家の要請で、
1度はメールをしたものの
それ以降は無視を決め込んだ。

とりあえず、大家にはそれ以降何も言われていないし、
メールはしばらく続いたが、
私が着信拒否をしたので
それから音沙汰はなくなった。

が、それからすぐの事。

深夜に佇む

ある日の深夜。

番犬とはお世辞にも言えないうちの柴犬が、
スクっと立ち上がり
玄関のほうへ歩いて行った。

元々吠える犬ではないが、
不穏な雰囲気を醸しながら
玄関の扉を見つめている。

まぁ獣のやる事なので、
最初は気にしてなかったが
あまりにも長く玄関ドアを凝視していたので
流石に不信に思い、
得意の猫歩きに加え、
極力気配を消してドアまで行って
スコープを覗いたんだ。

 

 

・・・・・立ってるんだよ、玄関ドアの外に。

その件の住人がっっ!!

お世辞にも美人とはいえない、
それどころかどちらかというと
根暗なアンパンマン顔の女が
身じろぎもせずドアの前に立ってるんだよ!!

時間はもはや丑三つ時。
その時間に他人の家の玄関前に
無言で立つ女!!
しかも、怪異ではなく生身!!

・・・・この凍り付く恐怖を理解していただけるだろうか?

まぁ、これだけでは恐怖は伝わらないかもしれない。

実は、この女から散々届いていたメールなんだが、
一番初めのメールはマトモだったんだ。

が、回数を増すごとに
段々変になっていってたんだ

こう、内容が飛んでたり、
文章が全部ひらがなだったりさ。

そうゆうのが続いて、これだよ。
怖くないか?

扉ガンと開けても良かったけどさ、
多分、言っても無駄というか
再び大家に泣きつくだけだと思ったから、
その日は、そのままそっとドアから離れ・・・

電気消さずに寝たよ。

・・・・怪異が出ても
「一昨日きやがれ!」
って電気消して爆睡する私が
流石にこの日はしばらく寝付けなかった。

流石に薄気味悪くて(爆)

正常と異常の境界線などない

オチとして、
このWさんというのは、
ちょっと病んでいる人というか、
ぶっちゃけると病気の人だったんだけれど・・・

別に病気の人じゃなくても
これに近い事をやらかした人は
一杯いるからな!!

いや、まぁ、そうゆう人々も
‟実は病気でした”
という可能性も無きにしも非ずなんだが。

こうゆう場合、症状に波があるから、
そこを切り抜けると
興味対象から外れる場合もある。

なので、
ひたすらひたすら彼女に会わないように生活をした。

ゴミ出しについても、出勤時も
ひたすら会わないように周囲確認をして
Go!みたいな。

やっぱり生活時間帯が微妙にズレているせいか
そこまで会いそうな事ってなかったし、
半年過ぎる頃にはターゲットが変わったのか
すれ違っても見向きもされなくなったけどね。

 

この一件について、外野からは
「すぐに人と仲良くするからだ」
「スキがあるからつけ込まれる」
などとアレコレ言われたが、
正直、メールの段階でそれを見抜いて
拒否るのは無理だと思う。

一番最初のメールは、
細かい事は全然書いてない
ごくごく一般的な内容のメールだったから。

そりゃ「インターフォンを押せません」っていう時点で
「あ、ちょっとな」とは思ったけれど、
そこで「じゃあ話はなしで!」って
断る人のほうがどうかしてるし。

大家さんだって別に偽善心やお節介じゃなく
大家としてごく一般的
「困った事があったらどうぞ」
って言ってるんだよね。

※またこれも「一般的って何?」っていう馬鹿がいるから
書いておくけど、水漏れとか近隣の騒音だとか
集合住宅における一般的なトラブルね。
今回Wさんが相談にいった話なんて
全くもって大家の仕事じゃない。
そしてそこが分からない時点で異常なのだと思う。

我々は誰でも日常的に
「あれは正しい」「あれは異常だ」
と簡単に言っているけれど・・・・

本当は正常と異常の境目なんて
‟あってないがごとく”
なんだ。

むしろ、今はマトモに見えている顔だって
異常な部分の側面でしか
ないかもしれないだ。

だから私は、怪異的なものよりも
人が一番怖いと思うのだ。

同じ物理次元に存在しているからな~
刃物持ってブスってやろうと思ったら
すぐに出来るもんね。

 

まぁ私はこれからも
別に病気だから障害があるからって
人を差別するつもりはないけれど、
とりあえずね・・・・・

人を自分の家にあげるのは
これ以降一切やめました(爆)

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