蛇顔の女

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昔、行者のジジイに

「霊感うんぬん以前に
そうゆう事が分かる奴は
“やったらいかん事”は
不思議と出来ないようになっている」

と言われた事がある。

どうゆう事かというと
やってはいけない行動を取ろうとすると
絶対に自分の体が動かない
という摩訶不思議な話だ。

聞いた時は「そんなものか」と思っていたが、
まさかそれを自分が体験する羽目になろうとは・・・

蛇顔の女

これは、私が20代後半だった頃の話だ。

当時もやはり絵を描いていたが
両親が色々とうるさいため
相変わらずOLとの二重生活をしていた。

んで、その時は派遣社員だったんだが、
その会社をそろそろ辞めようという事になり
後任に引継ぎをする事になった。

私の後任には、やはり同じ派遣社員の
Hさんという女性がやってきた。

確か私とそう年の変わらない人だったはずだが、
見た目から能力、性格まで可もなく不可もなく
・・・まぁ一見普通の人だったわけ。

入った当初は特に問題もなく、
一週間ほど引継ぎをしていたか?

そしてある日、
仕事中に彼女が寒そうに腕をさすっていた。

まぁ、そうゆうの見たら普通に
“あ~寒いんかな?”
って思うじゃない。

私「Hさん、寒いのなら私の上着を着てもいいよ。
外用のジャケットだけど、
薄手だから着ても仕事の邪魔にならないと思うよ」

と、私のジャケットを彼女に貸してあげた。

それから数時間後、彼女は定時の17時で帰って行ったが、
私は20時くらいまで残業をしていたと思う。

仕事も終わり、帰ろうとして
彼女から返してもらった上着に手を通そうとした。

・・・が、何故か手が通せない。

断っておくが、私は潔癖症などではない。
大皿から皆で取って食うのも平気だし、
上着を人に貸すのは日常茶飯事だ。

それなのに、どうやってもその上着が着れない。
上着を羽織るために手を動かそうとしても
自分の手が動かないのである。

しょうがないので、そのまま帰宅する事に。

季節はもう秋で、
上着なしだと当然寒い。

震えるほど寒いので、再び上着に袖を通そうとするのだが、
そこまで寒くても腕が動かないのである。

もちろん、他の事は出来る。
他の事をするには普通に腕は動く。
それなのに、その上着を着る事だけを体が拒否するのだ。

お蔭で、寒いのに上着を手に持って
震えながら帰るハメに・・・。

 

帰宅後、洗濯機に上着を放り込み、
ふと思って塩を一つまみ入れて
洗濯機を回した。

回る洗濯機を見ながら
「おかしいなぁ。私は知らん間に潔癖症にでもなったか?
Hさんが見るからに小汚い人なら分かるが、
別にいつも小綺麗にしているんだがなぁ」

と、ボンヤリHさんの姿を思い浮かべた。
・・・が、そこで妙な違和感を覚えた。

思い出したHさんの姿。

首から下は、太くも細くもないHさんの体。
しかし、首から上は
“蛇の顔”
なのである。

蛇の顔と言っても、完全にあの蛇の頭が乗っているわけではない。
Hさんの髪型で、耳があってピアスをつけて・・・と、
なんとなく彼女の顔形の特徴は持っているが、
顔の中身が蛇なのだ。

「はぁぁぁぁ~??」

再び思い出してみる。

何度やってもやはり首から上が蛇の顔。
しかも、やればやるほど詳細が見えて
最終的にはうっすらと鱗まで見える始末。

なんぢゃごりゃ~!!

後ろで、ゴウゴウと回る洗濯機の音を聞きながら、
なんだかトンデモナイモノを見てしまった気になり、
冷や汗が出た。

 

そして翌日。
上着は一度洗ったら普通に着られるようになっていた。

そして、当然Hさんとも翌日会ったが、
やっぱり蛇の顔などしていない。

さらによく言う「爬虫類顔」というタイプでもない。

・・・やっぱりあれは気のせいだったのだろうか?

 

そうして終業時間。
Hさんは、いやに楽しそうに帰り支度をしている。

私「何?どうしたの?どっか遊びに行くん?」
H「いやぁ、友達と名城線に乗りに行くんです」
私「名城線? 地下鉄に乗りに行くの?
乗って何処かへ行くんじゃなくて?」
H「ほら、あれ、最近繋がって輪っかになったじゃないですか。
あれをグルグル回ろうと思って」

確かに、名古屋には今まで山の手線のようなグルグル回る路線はなかったから
それが珍しいのだろう。

でも所詮は地下鉄だ。
あんな何も見えない所を走って面白いのだろうか?

そんな私の表情を察したのか、
彼女はもう一言加えた。

H「なんかあの繋がった路線図
・・・・大きい蛇みたいですよね」

多分、彼女はにっこり微笑んだんだと思う。

しかし私にはその時、
目の前にいる彼女が
巨大な蛇にしか見えてなかった。

引きつった顔で「あ・・・見ようによってはそうだよね」
と返すのが精いっぱいだった。

 

それから一週間も経たず、
Hさんは突然会社を辞めた。

理由は
「生き別れになっていたお父さんが亡くなって、
どうたらこたら・・・」
というよく分からない内容だった。

その訳の分からない理由に納得いかず、
担当者に「どうなってんの?」と問い合わせたのだが、
どうやら先方にもHさんからそうゆう内容で連絡があり、
それ以降は全く連絡が取れないそうだ。

 

それからすぐ、ジジイに会う事があったので
一連の事柄を話してみた。

ジ「あぁ、それは間違いなく蛇が憑いとったんだ」

はぁぁ?いや、それなんか短絡的すぎん?

ってか、蛇憑きだから返してもらった上着が着れなかったんかね?
そもそも、蛇憑きと急に仕事ブッチしたの関係すんのかね?

ジ「上着についてはようわからん。
だが、いなくなったのは逃げたんやろ?
お前に正体を見破られてしもったんやから。
あぁゆうもんは普段上手に隠れるが、
正体が露見したら駄目だ。
祓われてしまうからな

この時は「まさか、まさか」と思っていたし、
この一連の出来事の真偽は今でも分からない。

しかし、今にして思うと
多分、‟上着を着るor着ない”は
どうでも良かったんだと思う。

むしろ、上着が着れなかったからこそ、
“離れた場所から彼女を視る”
という行動をしたわけで・・・・

それは、今のように
まだそうゆうモノのコントロールが
分かっていなかった私に

“誰かがやらせたこと”

なのかなぁと思うのだ。

真相は今もって闇の中だ。

 

あれから10年以上経つわけだが
たまにこうゆう後から思い出すと
どうしても違う顔しか出ない人には
たまに会う。

そして、その数が以前より増えている気がするのは
私の気のせい・・・・だろうか?

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